春は人事異動の季節だ。新しく入社してくる新人はもちろん、既存のベテラン社員も、春にまとめて動くケースが少なくない。出版業界には「人事とかキャリアに関する本は春先に出すと良く売れる」というセオリーまで存在するほどだ。というわけで、今回は人事異動について取り上げたい。

ジョブローテーションは転職に不利?

日本企業のオリジナルなキャリア形成システムの一つに、ジョブローテーションがある。数年おきに部署を異動させる制度のことで、営業のように同一部門内ながら転勤を伴うものから、営業→内勤の管理部門と言った具合に、まったく業務内容の異なる部署への異動というものまで幅広く存在する。ほぼ2、3年ごとに別畑の部署を転々とする霞ヶ関のキャリア官僚が代表だ。

ムラ社会のシステムには、必ず正と負、表と裏の面がある。ジョブローテーションにももちろん該当する。この場合の正の面とは、広く社内業務に精通し、より俯瞰的に会社を眺めることができるようになるということ。会社側から見れば、終身雇用で面倒見続けなければならない以上、とんがったパーツよりどこでも当てはまる汎用パーツになってくれた方がありがたいということだ。

そしてこのことは、そのまま負の面ともなっている。一社限定の汎用パーツに特化するということは、それだけ専門性が希薄になってしまい、転職の可能性が少なくなってしまうということを意味する。つまり、転職を封じて、滅私奉公するしかない人材を育成するという面もあるのだ。要するに、人材の社内価値と、労働市場における価値がトレードオフになっているわけである。

というわけで、会社内での出世を目指すのであれば、ジョブローテーションという枠組みの中で学べるものは何でも学び、社内価値を高めるべきだろう。

ただ、今の時代、大手であっても、この先何十年と安泰である保証はない。個人の出来る範囲でかまわないから、社内価値と市場価値を出来るだけ接近させる努力はしておくべきだというのが、筆者のスタンスだ。

その観点からいえば、自身の望むキャリアを想像した場合、その肉付けになるような経験やスキルが身に付くような異動が良いジョブローテと言える。逆に、まったく自身の描くキャリアデザインとかすりもしない職種への異動は悪いジョブローテであり、なるべくなら避けた方がいい。