マーケッターの眼

老舗ブランドのイメージで好まれる三越と利用実感に基づいて選ばれる高島屋。支持基盤があるか否かで差が出る。

百貨店業界は成熟産業で、各社とも差別化戦略を打ち出しづらい。レーダーチャートを見てもらえばわかるが、今回比較した3社のチャートは、見事なまでの相似形になっている。消費者が、際だった「他店にはない何か」を求めて百貨店を選んでいるのではないことがよくわかる。

この部門で1位になったのは高島屋だ。一言で言えば、支持基盤と総合力の勝利だろう。今回、高島屋を選んだ人のうち、1年以内に利用した人は約75%。一方、2位だった三越で1年以内に利用した人は約45%である。

三越をイメージ先行で評価する人が多いのに対し、高島屋を評価する人は、一定のイメージを持ちながら、なおかつ来店した実感で高評価を与えている。百貨店業界全体の顧客離れが進むなかで、このように一定の支持基盤があることは強みになる。

3位にランクされた伊勢丹は、「ファッションの伊勢丹」を前面に出して独自性を出しているが、今回の調査結果を見るかぎり、それがブランドの確立にまでは結びついていないようだ。ファッションの充実に関係する「品揃え・品質」の評価は、高島屋が418ポイント、伊勢丹が412ポイントで、ほとんど変わりがない。

いずれも4位の大丸の283ポイントを上回っているため高評価を得ているともいえるが、総合力で勝負する高島屋にとっての400ポイントと、ファッションで勝負する伊勢丹にとっての400ポイントは、重みが異なる。

伊勢丹としては、この項目では高島屋よりも高いポイントを取っておきたい。「ファッションの伊勢丹」を消費者に浸透させるには、品揃えや品質の一層の充実が必要かもしれない。一方の高島屋は、立地なども含めた総合的な底上げを狙いたいところだろう。