マーケッターの眼

価格の安さで消費者を引きつけたPB商品はここ2~3年で品質も進化。とくに大手の商品は圧倒的信頼感でブランドロイヤルティを高める。

食品スーパーでは、イオン系のマックスバリュが、他の追随を許さない圧倒的な強さを見せた。

評価されているポイントはいくつかある。まず特筆したいのは、「利便性(立地や営業時間)」だ。マックスバリュは食品スーパーでありながら、ロードサイドの大型店が多く、駐車場が充実している。総合スーパーのランキングでも触れたが、自家用車の利用を前提とした店づくりは、最近の消費者の買い物スタイルに合致している。PB商品の存在も無視できない。マックスバリュはイオン系のPB「トップバリュ」を展開しているが、これがブランドロイヤルティに大きく貢献している。

消費者がブランドに対してロイヤルティを感じるときのテコとなるのは、「(1)商品やサービスの品質」「(2)価格やポイント制といった金額的な価値」、そして「(3)習慣や惰性で買い続けている慣れ」の3つだ。

PB商品が棚の一角を占め始めたときは、まず低価格がドライバーとなって消費者を引きつけた。さらにここ2~3年でPB商品の品質の高さが浸透してきた。

とくにイオン系の「トップバリュ」、セブン&アイ・ホールディングス系の「セブンプレミアム」といった大手のPB商品は信頼感が高く、価格から品質をテコとしたブランドロイヤルティへと変容しつつある。抜群の認知度を誇るPB「トップバリュ」を要するマックスバリュが、「価格」や「品質」の評価で他のスーパーを大きく引き離したのも頷けよう。

他のスーパーはどのように対抗すればいいのか。じつはこれがなかなか難しい。食品スーパーは消費者が日常的に利用する業態であるため、肉、魚、野菜の生鮮3品の種類の多さが、顧客を飽きさせないポイントの一つだと言われている。

とはいえ、食品スーパーは成熟産業で、すでに完成された業態である。これ以上、単なる品揃えの豊富さで差別化するのは難しいかもしれない。

私の注目ブランド→成城石井

食品スーパーの常識とは逆に、品揃えを増やすことより、むしろ厳選することで高評価を得ているのが高級スーパーの成城石井だ(今回のランキングでは調査対象外)。

「安売りはしない」という方針を貫く大久保恒夫社長のもと、価値の高いオリジナル商品を独自に開発。バイヤーが世界各国から食材を買い付けることで、価格以上の価値を提供している。

※すべて雑誌掲載当時

(坂本道浩、宇佐見利明=撮影 ライヴ・アート=図版作成 <マーケッターの眼>小野譲司/村上 敬=構成)