マーケッターの眼

顧客満足度の観点から見逃せないのが「接客や店内の雰囲気」。顧客の期待に反して、店舗側は軽視し注力していないことが多い。

総合スーパー(GMS)では、イオン系のジャスコと、セブン&アイ・ホールディングス系のイトーヨーカ堂が他ブランドを引き離して高く評価された。この2社はそれぞれの項目で他ブランドの評価を上回っている。

二強のうち、とくに評価が高かったのはジャスコのほうだ。どの項目でもジャスコに軍配が上がっているが、なかでも注目したいのは「利便性(立地や営業時間)」である。イトーヨーカ堂が218ポイントであるのに対し、ジャスコは428ポイントで、倍近い開きがあった。

明暗を分けた要因は、おそらく立地だろう。両社は出店場所に大きな違いがある。ジャスコは郊外型の大型ショッピングセンターが多く、消費者が車で買い物に行くことを前提に店舗がつくられている。一方、イトーヨーカ堂は駅に近い単独店舗が目立ち、車よりも公共交通手段を利用する消費者に受けがいい。

「近所にこのチェーンがなかったらどうするか」という質問に対して、「自家用車・バイクに乗ってでも行く」と答えた人の割合はジャスコのほうが高く、逆に「電車・バスに乗ってでも行く」はイトーヨーカ堂のほうが高かった。

従来、小売業では「駅に近い=立地が良い」とされてきた。しかし、近年は消費者の買い物スタイルが変わり、安いものを一度にまとめ買いして自動車で運ぶ傾向が強くなってきた。そうなると、「利便性=自家用車でのアクセスのしやすさ」となる。郊外型が多いジャスコが高く評価されているのも納得だ。

もう一つ、顧客満足度の観点から見逃せないのが「接客や店内の雰囲気」だ。スーパーは消費者が商品を自分で選んでレジに持っていくセルフサービス方式なので、そもそも接客が顧客満足度に与える影響は相対的に小さいと考えられてしまうかもしれない。

そのためスーパー側は接客を軽視しがちだが、じつは消費者はそう見ていない。実際、今回の調査では接客の評価がジャスコ170ポイント、イトーヨーカ堂が105ポイント、西友65ポイントだったが、これはそのまま全体の評価と重なっている。

私が分析にかかわった日本版CSI(サービス産業生産性協議会算出の顧客満足度指数)でも、各社総じて接客に対する評価が低く、消費者の期待に応えていない実態が浮き彫りになっていた。今後、どのように接客の質を上げていくかが各社の課題だろう。

※すべて雑誌掲載当時

(ピクスタ=写真、宇佐見利明=撮影 ライヴ・アート=図版作成 <マーケッターの眼>小野譲司/村上 敬=構成)