国民民主党が、2022年度の政府の予算案に賛成したことが、政界で波紋を広げている。ジャーナリストの尾中香尚里さんは「野党への『批判ばかりで提案がない』という批判を受けて、国民民主党は『提案型野党』と自称している。だが、この手法で成功した野党はない。野党性を失った国民民主党が今後このままの形で存続するのは難しいだろう」という――。
ガソリンスタンドで給油する人の手元
写真=iStock.com/coldsnowstorm
※写真はイメージです

トリガー条項を条件に予算案に賛成した国民民主党

2月22日に野党・国民民主党が政府の2022年度予算案に賛成した。高騰する原油価格を引き下げる「トリガー条項の凍結解除」を検討するよう岸田文雄首相に取り付けたことが、同党が賛成に回った表向きの理由だ。

もっともトリガー条項の凍結解除は、自民党内では早々に見送りの公算が強まっており、現状では国民民主党が何のために予算案に賛成したのか、よく分からない状況になっている。玉木氏は17日になって「『トリガー』を全くしないという話になったら(与党との)協議から離脱する」と発言したが、後の祭りである。

政界にはそこそこの波紋が広がっているが、筆者には率直に言って「いずれこうなるだろうと思っていた」という印象しかない。

玉木雄一郎代表は2018年の結党以来、自らこそが「野党の盟主」であるかのように振る舞おうとしてきた。かつて政権を担った民主党の後継は自分たちだ、との意識が強かったのだろう。だから、同じ民主党出身者が多くを占める立憲民主党が野党第1党となり、国民民主党との勢力に差がついていくことを認められなかった。

そのため国民民主党は、日本維新の会など「立憲以外の野党との連携」をあれもこれもと模索し「立憲より上の立場」を目指そうとしたが、何一つ奏功しなかった。それどころか、国民民主党の所属議員の多くが今や立憲民主党に移り、かつて国民民主党で政調会長として自分を支えた泉健太氏が、いま立憲の代表になっている。

野党の「与党化」という禁断の果実に手を出した

こんな状況に玉木氏が耐えられるわけがない。だが、野党の枠組みのなかでは、もうどうやっても「立憲民主党の兄貴分」にはなれない。八方ふさがりとなった玉木氏は、禁断の「与党化」に手を出すほかはなくなった。ただそれだけのことだろう。

この問題は自民党による「野党引き込み戦略」の一環として語られがちだが、筆者はそこにはあまり興味はない。自民党の戦略がどうであろうと、上記の理由から国民民主党がいずれ「与党化」することは容易に想像できたからだ。しかし、そう言ってしまっては身も蓋もないので、ここでは玉木氏を含め、旧民主党出身の議員たちの「世代による野党観の違い」という点から、この問題を振り返ってみたい。