古市憲寿●ふるいち・のりとし 1985年、東京都生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程在籍、慶應義塾大学SFC研究所訪問研究員(上席)。著書に『希望難民ご一行様 ピースボートと「承認の共同体」幻想』、共著書に『上野先生、勝手に死なれちゃ困ります 僕らの介護不安に答えてください』などがある。

会社の部下や世間の若者を見て、「最近の若者は……」と思ったことが一度くらいはあるだろう。

「日本経済を語るのは難しいけど、若者は論じやすい対象。自分の世代と比較でき、説得力もある。都合のいい社会語りの材料として、若者が使いやすいんじゃないでしょうか?」

そう語るのは『絶望の国の幸福な若者たち』を執筆した26歳の古市憲寿さんだ。古市さんは増える一方の非正規雇用などの「不幸な若者」や、海外やモノへの興味がない「内向きな若者」といった論調に疑いを抱く。

「図書館やインターネットなど、誰でも手に入る資料」を集めてみると、実際にはそうでもなく漠然としたイメージでとどまっていることに気づいた。

各種調査によると若者は今の自分を「幸せ」と感じているという。また、その一方で「不安」も抱えている。古市さんは著書で「人はもはや将来に希望を描けない時に『今は幸せだ』と答えるほかはない」と指摘する。

ただ、若者の一人である古市さんは絶望を抱えてはいない。

「技術が進化し、服や食べ物の選択肢もはるかに増え、単純に昔がよかったとも言えません。会社で働き続けることがどれだけ幸せかと考えると、マクロな経済状況が悪くても、身近な関係の中で幸福を感じられる今のほうがよほどいい」

だから古市さんは著書のなかでも、身近な友人や家族を大切にする若者たちに希望を見出す。

「人はそんなに想像力が及ばないし、震災や原発のこともすぐに忘れがち。自分が困難に直面したり、違和感を持つことをきっかけにしか人は動かないし、そこからしか変わらない」

古市さんは“想像力の及ぶ範囲”として、自分とそのまわりを挙げる。世代を超えてこうした意識の人が増えれば、何かが少しずつ変わるかもしれない。

社会学の研究の傍ら、友人と設立した会社で、好きなことを好きな人たちとやることを模索する古市さん。そんな彼がこれから綴る“現代社会”をぜひ読んでみたい。