男女の社会的な性差を示すジェンダーギャップ指数で、日本は世界最底辺の120位(2021年)となっている。なぜそうした男女差別が放置されているのか。作家の橘玲さんは「日本の会社は残業時間で社員の昇進を決めている。このため子供を産んだ女性は、いきなり二級社員のように扱われてしまう」という――。(第3回)

※本稿は、橘玲『不条理な会社人生から自由になる方法』(PHP文庫)の一部を再編集したものです。

デスクワークをする妊娠中の女性
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日本の雇用制度は「イエ社会」を前提としている

戸籍制度に象徴されるように、日本はいまだ前近代的なイエ社会です。女性は「嫁入り」して文字どおり夫の「家(戸籍)」に入るのですが、男性が所属するイエは戦後の日本社会では「会社」です。男は会社、女は家庭という「イエ」に所属して社会を成り立たせてきたのが日本という国の姿です。

高度経済成長期にはこのイエ社会はうまく回っていました。50歳時未婚率の推移をみると、1950年は男性1.5%、女性1.4%、1970年でも男性1.7%、女性3.3%で、日本人のほとんどは生涯(おおむね50歳まで)に一度は結婚していました。こうした状況が変わりはじめるのが80年代からで、1990年には男性の未婚率が5%を超え、2000年に12.6%、2015年に23.4%、2020年は25.7%と急激に上昇していきます。

女性の未婚率は2010年に10%を超え、2020年には16.4%になり、いまでは男性の4人に1人、女性の6人に1人が独身のまま生涯を終えます。

国民の大多数が結婚して「イエ」を構えることを前提とした制度は、もはや維持不可能になりました。しかし、イエ社会を前提とした日本的雇用は、こうした大きな変化にまったく対応できません。

男女の社会的な性差を示すランキングで日本は120位

日本でも1985年に男女雇用機会均等法が施行され、形式的には男女平等なはずなのに、管理職の男女格差はきわめて大きなままです。企業における女性管理職の割合はアメリカ39%、イギリス37%、フランス35%なのに対し、日本はわずか13%にすぎません(2019年)。その結果、男女の社会的な性差を示すジェンダーギャップ指数では日本は世界最底辺の120位(2021年)です。

─―情けないことに、これでも前年の121位から順位が1つ上がったといってよろこんでいます。

なぜこんなことになるのか、その謎を解明したのが社会学者の山口一男さんです。

山口さんは、アメリカなど欧米の企業では、役職と学歴はリンクしているといいます。当然、管理職の比率は大卒が多く、高卒が少なくなります。これはアメリカだけでなく、世界中がそうなっています。

学歴社会なのだから当たり前だと思うでしょうが、山口さんは世界にひとつだけ、この原則が通用しない国があることを発見しました。それが日本です。