俣野さんは、リストラ要員になったことで危機感を持ち、一念発起して社内ベンチャーを立ち上げた。その経験や、そのときに培った自分なりの仕事哲学を本にしようと思ったのがきっかけだった。まず、自分の考えをブログやメルマガに書くことから始めたという。

「社内メルマガを100本書いて、感想をフィードバックしてもらい、読者には何が響いて、何が伝わらないのかを分析しました。かなり書きためたころに知人の紹介で編集者に出会い、書籍化が決まったんです」

本を書くきっかけは人それぞれだ。冒頭の伊藤さんの場合は仕事の付き合いを広げていたら、周囲に本を書いている人が多いことに気づき、「これなら自分でも書けるんじゃないか」と軽い気持ちで考えたことが発端だ。結果的には、本を書いたメリットは大きかった。

「やっぱり人脈が広がったことが一番ですね。メディアに出たり、講演やセミナーに呼ばれることも多くなり、いろいろな人と会うことができました。読者に自衛隊の方がいて、『この本は軍事に通じる!』と仰っていただき、自衛隊の駐屯地で講演したこともあります。本当かなと半信半疑でしたが、実際話をしたらめちゃくちゃ受けました(笑)」(伊藤さん)

俣野さんも「本は最強の名刺」と話す。やはり、人脈づくりに絶大な効果があるようだ。土井さんが言う。

「外資系のヘッドハンターはメディアをよく見ていますから、本を書いたことで他社から誘いがきたという話はよく聞きます。あとは、単純に印税も出ますからね。定価の6~10%が相場ですから、よほど売れないと濡れ手で粟、とはいきませんが」

しかし、「動機が目立ちたいとか、稼ぎたいというものだと、大抵続かない」と土井さんは続ける。やはり、自分の仕事をさらに探求したい、自分の経験を伝えることで人を助けたいと思って書く本が、ロングセラーとなるのだ。

(PIXTA=写真)