100円雑貨で自作「小姑ミラー」は世界へ

班長の谷尚子さん。1990年、三重県立菰野高校卒業後、同社に入社。初めての海外指導は99年の米国。以来、世界を飛び回る。左手に持っているのが「小姑ミラー」。

意識が変われば、現場での創意工夫が次々と生まれてくる。谷さんが考案し、世界各地の工場で使われている小道具のひとつに「小姑ミラー」がある。100円ショップにある雑貨を組み合わせた便利グッズで、電灯の傘など高所で目の届かないところも、簡単にチェックできる。終業後に時間があるときは、職場の同僚と100円ショップに乗り込み、掃除に役立つグッズを探すのだという。

こうした「ピカピカ活動」は、海外指導の現場でも「PikaPika」というスローガンとあわせて浸透が図られている。

谷さんが南アフリカの工場を訪ねたときのこと。なんと工場内を鳥が飛んでいた。天井を見上げると、立派な巣まであった。しかし従業員は旋回する鳥を見ても、まるで驚かない。谷さんは思った。

「掃除するという文化がないんだな……」。現地では掃除道具すら売っていない。仕方なく、日本の100円ショップで200箱分の道具を買い込み、現地に送った。いまでは南アの工場でも掃除文化が根付いてきているという。

海外でも工場の主力は女性だという。

全世界で競い合うためには、評価基準を統一する必要がある。住友電装では、ベテランの技術者6人を「PK評価審査員」に任命。6人は世界中の工場を回って、PK活動のチェックと評価向上に向けた助言を行っている。谷さんの「小姑ミラー」も全世界で共有され、グループ全体のレベルアップに活かされているという。

この活動を始めてから、現場の士気が目に見えて向上したと、工場長の豊田さんは説明する。

「PK評価シートは毎年更新されます。その際、(谷さんのような)オピニオンリーダーが、項目の改訂について意見を述べます。だから管理監督者としての目線も入るわけです。普段から『PKで何点レベルやな』『PKやったら、これはあかん』とPK評価が判断基準になる。やるべきことが明確だから、達成感も得やすいんです」