土日は7~8皿のメニューを調理し、店頭で提案する

浦安地区は、東京都心のオフィス街に通勤する人たちのベッドタウンである。パート勤務を希望する主婦にとって、20分もあれば東西線で大手町に通うことができ、働き口を自由に選べる場所である。それにもかかわらず、多くのパート従業員がヤオコーに長く定着しているのは、店舗での働き方と職場の雰囲気が独特だからである。

「前に勤めていたスーパーでは、勤務が4時間と短かったこともあって、言われたことをそのままやるって感じで。でもここは、どちらかというと、自分で考えて自分でやっても許してくださる。だから、やりがいがありますね」(斉藤さん)

クッキングサポートは、夕食などの料理メニューを調理して、見本品として展示してあるコーナーである。各店舗には、斉藤さんのようなパートナーさんが、最低でも一人は専任者として配置されている。斉藤さんは、平日で4~5皿、土日は7~8皿以上のメニューを調理して提案する。

もちろん本部からは、プロモーションで推奨すべき食材が伝えられる。しかし、どの食材を使ってどのような料理をお客さんに提案するかは、斉藤さんに任されている。野菜・肉・魚などの生鮮品から出汁に使う調味料まで、調理用の食材はさまざまな売り場から集めてこなければならない。

「ここのお店の人は、やさしいんです。今日の食材はどうなっているのか、どこにあっていくらなのかなど、コミュニケ(ーション)しなきゃならないことが多々あるので、ついなんでも聞いてしまうんですけど、みなさん嫌がらずに丁寧に受け応えしてくれて。以前働いていた他の店では、(正社員に)聞くことなんかありませんでした」

斉藤さんと木村店長の話を横で聞いていると、正社員(17人)とパートナーさん(約130人)の間での、部門を跨いだ横のつながりが強いことがよくわかる。

私が取材に伺った日は、クリスマス前だった。午前中に斉藤さんがつくったクリスマスケーキの見本を、小学生くらいの男の子とお父さんが興味深そうに見つめていた。斉藤さんに「常連さんですか?」とたずねると、「初めてのお客さんですね」と返事が返ってきた。ヤオコーのパートナーさんたちは、近所に住んでいるので、お客さんの顔を覚えている。

「平日の来店客が3000人から4000人です。斉藤さんは、そのうちの半分くらいの方を覚えていますよね」(木村店長)