そのなかでNECの強みはと問うと「ITとネットワークの両方を効率的に使い、駆使できるというのは、やはりNEC独特の力じゃないかと理解している」という。

たしかに富士通を除けば、世界的に見ても、同じ傘の下にITと通信の両方の技術を兼ね備えている企業は少ない。が、見方を変えれば、経営資源が分散してしまっている。その総合力を活かせるかどうかは、まさに遠藤のかじ取りにかかっている。

遠藤は大学では電磁波論を専攻し、工学博士号を持つバリバリの理系だが、その言葉から、経営に関しては「アナログ」ともいえる熱い側面を持つ。

「社員の前で『戦略』なんか信じるなといったんですよ。事業をやり遂げようという強いWILL(意志)があれば、成功は導けるのです」

遠藤はモバイルワイヤレス事業部長時代、当時、赤字に喘いでいた「パソリンク」を黒字化し、さらに世界シェアナンバーワンにまで引き上げた。パソリンクは、携帯電話の基地局間を結ぶ無線通信システムだ。

「当時、再生戦略などありませんでした。ビジネスとは人と人との所作です。お客様とのTRUST(信頼)と強いWILLが一番のキーです」

17年には、元会長である小林宏治が打ち出したC&C(コンピュータ&コミュニケーション)というビジョンが生まれて、40年になる。クラウドを見れば、その先見性や恐るべしだ。

ただ、結果論ながら、その後、NECはPC、半導体で光り輝いたものの、その成功がまばゆすぎて、C&Cの本質を突き詰め、ビジネスとして開花させたとは言い切れない。

NECが苦闘を続けている間、小惑星探査機「はやぶさ」は、7年間に及ぶ宇宙の旅を終え、地球に帰還するというミッションを果たし、NECの技術力の高さを実証した。次はC&Cに新たな息吹を吹き込むことが、遠藤とNECに課せられたミッションである。(文中敬称略)

(門間新弥=撮影)