よく言われるように、終身雇用タイプの日本企業は、こてこてのムラ社会である。

「自分の給料より他人の給料が気になって仕方がない」という感覚は、都会のマンション暮らしなら考えられないが、田舎の農村だと今でも普通に存在する感覚だ。

そして、ムラ社会のすべてがそうであるように、ムラのしきたりには必ず表と裏がある。「いつでもおいでください」と言われて、本当にアポ無しで訪問したらイヤな顔をされるのと同様、暗黙の境界線があって、そこを踏み越えないように世渡りしていかないといけない。だから、組織の中でキャリアをデザインしていこうとした場合、常に制度の表と裏の意味を理解した上で、キャリアへのダメージを回避していくことが重要になる。

たとえば、新卒採用の場合。職種別採用を行っていない企業において、採用面接で配属先や職種の志望をあまりにも強く言い過ぎると、人事担当者から敬遠される可能性がある。多くの企業がPRしている「自立した人材」や「明確なビジョンを持つ人材」というのはあくまで表の人物像であり、その裏には「終身雇用という枠内で、前向きかつ主体的に働いてくれる人材」という裏の人物像がある(これは相当矛盾しているのだが)。

なので、あまり強く主張する人材は「この学生は枠を超えていて、扱いづらいだろう」あるいは「3年で辞めるタイプだ」と判断される可能性がある。同様に、有給休暇の残日数や残業時間の極端に少ない人も注意が必要だろう。少なくとも僕が人事に配属された時には、勤務評定欄の一角に「残業時間」という欄はしっかりと残っていた。今でも古い会社では残っているという話をしばしば聞く。

そもそも、担当業務の切り分けが曖昧な職能給制度において、個人の貢献度を図る際に、残業時間や休暇取得日数といった定量的指標が、評価者の頭の中から完全に消え去るのは無理だと思われる。不況下、雇用調整の一環として「有給取得キャンペーン」的なPRはどこの企業でも進められているはずだが、ここでも裏の意味を読んで、からっけつになるまで使い切るのはおススメしない。

逆に本当に使うのであれば、下半期に、その年のうちに“消滅”することが確実な分を消費するのが安全だろう(多くの企業では、未取得の有休を持ちこせる期限が決まっているため)。普段は一定の残業をこなしつつ、上司がいない日や、出張の時だけ直帰する人というのはどこの職場にもいると思うが、終身雇用の中で生き抜くことを前提とした場合、これはいたって合理的な判断だ。

※すべてメルマガ配信当時