なぜ「わからない」のかを知る

以上に見てきましたように、低線量被ばくには確立された定説というものがありません。定説がないということは、施策を進めたり、基準文書を作ったりする側には大変困難な状況でもあります。

このことが、原発事故後の「ただちに健康に影響がない」という表現に繋がったり、文部科学省の校庭基準設定が二転三転したり、食品の規制値が暫定値であったりという混乱を引き起こしました。結果、誰しもが、何が本当なのか、誰が言っていることを信じればいいのか、そして自分たちはどう判断したらいいのか、途方に暮れる原因となっていたということです。

しかし、改めて考えてみると、「何がどの程度にわからないのか」はっきりわかっていることは重要なのではないでしょうか。結論は出ていない、科学的根拠が発表されていない、という事実を認識し、今提示されることをどう判断して行動するかということを、自分で決めないといけないのです。必要なのは、皆さんのすべてが放射線医学の専門家になることではなく、得られる情報を自分の状況と適切に照らし合わせていくことだと思います。

次回は低線量被ばくに関する2回目として、ICRP(国際放射線防護委員会)の勧告など国際的文書や国内の法規の状況を整理してみたいと思います。

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