「買ってよかった」と感じるのは購入後

見落とされがちなポイントだが、プレゼン資料は購入後のメリットを顧客にイメージさせるものでなければならない。どんな商品でも「買ってよかった!」と感じるのは購入した後である。人は実際に使用してメリットが生じた後、「よい買い物だった」と感じる。つまり、契約や購入する段階では、顧客は「購入後のメリット」をイメージして購入の判断をしているということだ。

サンプルやテストで実際に効果を確かめられる商品は、顧客のイメージをつくるのが比較的容易である。使用者の体験談を聞く会や工場見学などを実施して、「具体的なメリット」をイメージさせることも可能だろう。

しかし、体験を通じてイメージを構築することができる商品は限られている。また、体験を通して顧客にメリットを実感させるには、多大な時間と労力がかかる。特に法人営業の場合、関係者全員に同じ体験をさせることは不可能だ。プレゼンで購入後のメリットを提示し、顧客にイメージさせる必要があるのはそのためである。

メリットをイメージさせるためには、事実を客観的に伝える能力が求められる。ところが、多くの営業担当者は内容のない売り込みトークに終始しがちだ。

「今回の出来は最高です」

「絶対に損はさせませんよ」

こうした表現では何が、どれくらい、どのようによいのかが伝わらず、相手に不信感を抱かせてしまう。「営業マンの言うことは話半分だ」と思われても仕方がない。

事実を客観的に伝える最もわかりやすい方法は、メリットをデータで示すことだ。「これまでと全然違います」という表現より「年間コストが100万円削減できます」という表現のほうが具体的で信用できるだろう。

メリットとデータは競合他社の商品や、従来品と比較して一目で違いがわかるようにするのが基本である。比較表を作成し、顧客がそのまま社内で検討したり、稟議書に添付したりできる内容になっていれば、「使える資料」として顧客から大切に扱われ、捨てられてしまうこともない。

どんな資料を作成すれば顧客が納得し、顧客社内の検討資料として使われるようになるかを考えよう。感情移入を働かせ顧客の立場で作成すれば、プレゼン資料も営業の強力な武器となるのだ。

(構成=宮内 健 市来朋久=撮影)