40代50代が迷っている。給与アップや出世の望みは絶たれ、「45歳定年制」「役職定年」「年収激減の定年延長」と暗い未来しか描けない。「働かないおじさん」以前に「居場所がない」のだ。約900人のインタビュー調査をした健康社会学者の河合薫さんは「この世代は若い頃の感覚のままの人が多い。すぐに意識変革をしなければ、絶望死の恐れがある」という――。(第1回/全7回)

※本稿は、河合薫『THE HOPE 50歳はどこへ消えた?』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

報われない時代

今、「私」たちが生きているのは、魑魅魍魎ちみもうりょう跋扈ばっこし、幸せへの道しるべがありそうでない複雑な社会だ。「自分らしく生きる」という美しい言葉が闊歩かっぽするも、何が自分らしさなのかも定かじゃない。

もはや「社会的成功」という言葉が何を意味し、人生に何をもたらしてくれるかさえわからない。単に「個人的資産や収入の多さを意味する言葉ではない」ことはわかる。持てる者が常に豊かというほど簡単じゃないこともわかる。

しかし、ちっとも報われないのだ。普通に、ごくごく普通に「幸せになりたい」と頑張っているのに、ちっともカネは増えず、不安ばかりが膨らんでいく。

削られ続けるサラリーマンの収入

平成元年(1989年)以降、労働者の賃金が減少傾向に転じていることはご承知の通りだ(「平成29年賃金構造基本統計調査」)。OECD(経済協力開発機構)の分析では、1997年を100にした場合、スウェーデンの138.4を筆頭に先進国は軒並み130前後まで上昇しているのに、日本だけが89.7で低賃金先進国を爆走中だ。

赤いネクタイをゴミ箱に投げ込む
写真=iStock.com/komta
※写真はイメージです

退職金も1997年の2871万円をピークに年々下がり続け、2003年には2499万円、13年には1941万円、18年には1788万円まで下がり、20年間でなんと1000万円も減ってしまった(厚生労働省「就労条件総合調査」)。

一方、日本国内の富裕層と超富裕層の割合は、「アベノミクス」が始まったあとの2013年以降、広がり続け、クレディ・スイス「2016年度グローバル・ウェルス・レポート」によれば、日本の超富裕層(純資産5000万米ドル超)は世界最大の伸び率を記録しているという。