実測するだけで落ち着いて考えられる

平成24年度には、母乳の検査が行われることが決まりました。福島県内の母乳で赤ちゃんを育てるお母さんたちの希望者全員の検査をすると報じられています。測定が行われることはよいのですが、安全性を確認する基準をどう設定するかという問題は依然として残ります。何人かのお母さんの食事の摂取や生活について詳しく調べ、行動様式と母乳の放射性物質濃度の関係を明らかにする、というようなことが積極的に試みられるべきだと思います。実測と行動様式の関係性から多数の人の被ばく量を推定していくことの重要性は、母乳に限らず、今回ご紹介した多くの測定に共通するポイントです。

これらの「計測」は、主に行政や専門機関の責務です。例えば、空間の放射線量率の測定は、作業環境測定法という法律により、環境測定士に業務独占が指定されていて、資格なく測定することは想定されていません。専門的な知識を有さない人が放射線量を計り、誤った解釈が独り歩きすることを危惧する専門家もいます。

ただ、法律が現実に追いついていない面もあり、現在のように、放射性物質が身近に存在してしまっている現在の状況では、これに加えて、個人や住民主体の測定にも有用性があると私は考えています。さまざまな測定値が新聞やテレビで発表されているので、個人で測らなくても大まかな値はわかります。それでも、身近な場所の線量率や食材の放射性物質濃度を一度測ってみて、暮らしに即した状況を知ることには大きな意味があると思うのです。

ポイントをまとめると、

I.行政や専門機関は、情報を最大限公開すること

II.計測はタイムリーに行うこと

III.個人による測定を活用し、正しい問題意識を持つこと

以上の3点が重要であると思います。

次回からは低線量被ばくについて、数回にわたってご説明したいと思います。