一方で、自らの体験からも、「自分を光らせる」という手法は失敗すると感じています。

自分のことしか考えなくなったら、結果的にいいことにはならない。「売らなくちゃいけないから」とお客様に押し込むというのが最悪のケースです。それで数字を達成して、自分を一瞬光らせても意味がない。

また、「お客様は神様です」というのはクライアントファースト(顧客第一)の考え方とは思えません。お客様から言われたことをそのままやるだけではダメです。顧客にとって最も価値がある提案はなにか。これこそがクライアントファーストです。

コンピュータシステムを購入したいというお客様の倉庫を尋ねたときのことです。その倉庫はまるで整頓されておらず、ぐちゃぐちゃでした。コンピュータを入れても、とても管理できないような状態です。コンピュータの導入の前にやるべきことは、整理整頓でした。一時の売り上げを考えれば、効果を十分に発揮できなくてもシステムを売ってしまったほうがいい。でも将来、お互いに必ず後悔する。お客様には、「大変申し訳ないのですが、作業着ではなく、背広を着て作業できるような倉庫にしてから、コンピュータを入れましょう」と提案しました。

ここまで言い切るには、必死に勉強を重ねて、お客様のことを熟知しなくてはならない。視点は高く、視野は広く持つ。自分のスキルを磨いてこそ、クライアントファーストが実現できるわけです。

私は営業に、「お客様を光らせろ」と言っています。ラインマネジメントならば、「部下を光らせろ」と。お客様に満足してもらうソリューションを提案する、あるいは部下が生き生きと活躍できる場を提供する。それが結果として、自分が光ることになる。

成長に満足せず変革を常態化させる

必要な社員とは、どんな社員か。そう問われたとき、私は、2つの条件を挙げます。

ひとつは、自分を成長させることに意欲がある人。自らが立てた目標の達成に向かって、今日よりも明日、明日よりも明後日というように、自らの成長に喜びを持てる人です。