迷ったときは何をすべきか

90年代初頭、経営不振に陥ったホンダを蘇生させた当時の川本信彦社長は言った。

「特に何もやっていない。原点回帰しただけだ」

ホンダの社長の誰もが就任するたび「本田宗一郎の原点に返る」と話す。

ホンダはリーマンショック以後も高い収益性を誇っている。2010年3月期の営業利益は1900億円だ。ホンダを強い企業たらしめている一因として「ホンダらしさ」「オンリーワン志向」である点が挙げられる。量を追わないため車種は少ないが、生産性が高く機動性に富んだ魅力的な自動車ができるのだ。

そもそもホンダが、トヨタやGMの牙城に切り込むためには、オンリーワン戦略を行うほかなかった。この戦略を成功させるため、50年も前に技術部門の部課長制を廃止して組織をフラット・アンド・ウェブにした。

原点に回帰する姿勢は、宗一郎の有名な「雷」のなかにも存在する。特にすさまじい雷が落ちるのは「他者の真似をしている」「ホンダらしさがない」「自分自身の考えが出ていない」というときだった。

「人真似するな」という宗一郎の教育は、エンジン方式で「空冷式」に固執した宗一郎に対し、技術陣が「おやじの真似をするな」とばかり「水冷式」で押し切る事態につながった。その後、水冷式のCVCCエンジンは、当時世界で最も先端的でクリーンなエンジンとなった。「人真似をしない」姿勢はDNAとしてホンダに根付き、独創性なエンジンをつくり出した。この一件により宗一郎は社員からいっそう尊敬されることとなった。

現在、厳しい環境下にある日本企業。時には根本をしっかり見つめなおすことが必要だろう。