過度な「おもてなし」が裏目にでることも

こうした過剰品質のカルチャーは日本が得意とするモノづくりの世界だけでなく、サービス業にも深く浸透しています。

「おもてなし」という言葉があります。日本人はワン・トゥー・ワンで丁寧な「おもてなし」をしないと評価しない、受け入れないという側面があります。また、高いおもてなしの技術を持つ一人のカリスマ従業員が話題になり、その力によって企業が売り上げを伸ばすという例も散見されます。

おもてなしの精神そのものは、海外のホテルなどでも高い接客技術として評価されています。しかし、世界に進出し、受け入れられるためには、逆にそれが裏目に出てしまうことも考えられます。

ポイントになるのは、アメリカ流の「標準化」されたオペレーションです。流通や販売体制、一人ひとりの従業員に至るまで、やるべきことを決め、仕組みを整える。そうすることにより、人によってサービスの質に生じるギャップを最小限にとどめるのです。

「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングや、「無印良品」を展開する良品計画は、世界で成功している数少ない日本の小売業です。その理由のひとつに、提供する商品・サービスが標準化されていることがあげられるでしょう。セブン-イレブン、ファミリーマートなどの大手コンビニエンス・ストアチェーンも、近年、アジアを中心に積極的に海外進出を行っています。いずれの企業も、徹底した標準化を行っています。

顧客の声に耳を傾けるのは大切です。しかし、顧客の多くは何を求めているか。そこに耳を傾け、そのサービスを標準化していくことが重要なのです。

※すべて雑誌掲載当時

(構成=大塚常好)