「文句を言わないおとなしいタイプ」が真っ先に狙われる。企業が最も恐れるのは訴訟などのトラブルに発展することである。経営や管理部門の人間にとって、業績悪化は景気のせいにできるが、労務トラブルは自分たちのせいになるので、ぜひとも回避したいところなのだ。

「実力はあるものの、経営陣や上司にズバズバものを言うので、受けが悪いタイプ」も危ない。以前だったら、こうした跳ね返りタイプを許容し、うまく使うだけの度量が上の人にあったのだが、バブル崩壊後、企業から追い出されたり、責任を取って自分から辞めたりしたので、いま上にいるのは真の能力を見極められない人たちばかり。部下を評価する基準は「自分の味方かどうか」だけなのだ。

出向や左遷を免れたいなら逆のタイプを目指そう。つまり「何かあったら訴訟も辞さないぞ」という扱いの難しい人間になるか、経営陣や上司にかわいがられるタイプになることである。前者のタイプになるには、(真実かどうかはともかく)「両親が介護で大変だ」「子供が受験で大変な時期」ということを日頃からアピールし、「いまの生活に支障を来す配置転換には応じない」というオーラを出しておくのがいい。

一方、後者のタイプばかり演じていると、「文句を言わないおとなしいタイプ」にも見えてしまうので、ときどきは建前論的な文句を吐き、「部長の立場では言えないことをあえて言わせてもらいました」と、上の人の悩みや立場を理解している態度を見せておくことも重要だ。そうやって、「かわいいやつ」と「文句を言うやつ」を両立させておく必要がある。

最後に一言付け加えると、出向や転籍を強要される会社にしがみつくことが果たして幸せかどうかを真剣に考えてみることも重要だ。新天地を見つける、案外いいきっかけになるかもしれない。

※すべて雑誌掲載当時

(構成=荻野進介)
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