表の見方●当該路線のすべての駅から半径1km以内にある町丁目を対象として算出。所得は課税所得と控除額を合わせた額。金融資産は預貯金と貯蓄性保険、有価証券の合計。地図凡例の単位は「万円」(左)、「該当町丁目数」(右)。
出所:野村総研「エリア別の金融資産推計結果」(2008年10月発表)乗降客数にかかわらず地下鉄・JR・モノレール・ライナーを除く私鉄全線が対象。マップは総所得で塗り分けたもの。

年間総所得のエリア別推計と沿線別ランキングを取り上げましたが、これと「世帯当たりの金融資産」エリア別推計を比較すると、少し違った側面も見えてきます。

たとえば東京の場合、城東地区は総所得で見ると水準が低いのですが、金融資産で見るとレベルが高くなり、このエリアを走る京成押上線が沿線別ランキングのトップ10に入ります(1日の乗降客数が50万人以上の路線で比較した場合)。細かく見ていくと、城東地区は戦前から長く住んでいる住民が多く、高齢者の比率や持ち家率も多いことから、資産蓄積が厚いのだということがわかってきました。

そのようなエリアもあることから、少し極端な言い方をすれば、所得水準が低めでも資産の形成がしっかりとできている街は、年齢層が高い住民が多いといえそうです。逆に所得水準が高くても、金融資産が低めのエリアは、街も住む人も若いという傾向があるようです。

さらには、前者のように所得に対して金融資産の保有水準が高い街は、消費や人口の流動性が小さく、後者のように所得に対して金融資産が低い街は、消費や人口の流動性が大きいのではないかという見方もできます。また、所得も金融資産の保有も低めという地域は、概観すると街が古く、高齢化が進んでいると考えられます。

このように所得と金融資産をあわせて見ることで、街の成熟度、住む人の中心的な年齢層、街の元気さなどが大まかに浮かび上がってくるのです。したがって、わが街はいまどんな状態にあるか、またどんな街に住もうかと考えるときなどに、このデータをひとつの目安にすることができます。

ただ、これは現況を示す推計データなので、その街が今後どう動いていくかというところを読み取るには、別の要素を加えて見る必要があります。

たとえば、先に挙げた東京の城東地区は、現況では成熟して動きの少ない街のように見えます。しかし、墨田区に第二東京タワーを建設する計画があり、それにより京成押上線沿線の街が大きく変貌する可能性があるのです。そうした再開発計画の有無なども見ていくと、街の成長を推し量ることもできます。

大規模な再開発による大きな変化が予想されるのは、三都市では東京が際立っています。前述のようなランドマーク建設や鉄道開発など、直接街の成長にインパクトを与える都市開発が今後も続くでしょう。逆に名古屋の場合は、平均居住年数や不動産取引件数を見ても都市規模のわりに動きが少ないので、住む街を選ぶときなどはこの推計データをそのまま利用できそうです。

自分の身の丈に合った街を選ぶには

所得水準が自分と大きく違う街では、生活するのが大変です。さりとて、活気を欠く街に住むのも、暮らしにくいかもしれません。自分の身の丈、ライフスタイルに合い、しかも活気のある街に住みたいと誰もが思うでしょう。そのときにこの推計データとあわせて見るべき要素は、それほど複雑ではないのです。

たとえば、子育て世代で子どもの教育に力を入れたいというのなら、この推計データから当たりをつけたエリアの学校や塾の数を見てみるという方策があります。同世代が多いかどうかは、そのエリアの人口構成を見ればわかりますし、一戸当たりの床面積を見ていくだけでも、その街の全体像のうちのかなりの部分が見えてきます。そのような視点も持ちながら、この推計データを活用していただければと思います。