日本近海のイカは乱獲によって激減したが、世界でイカのような奇魚を食べるのは稀だとみえて、宝庫はまだいろいろなところにあるらしい。例えば、ニュージーランド近海でも大量のイカが獲れるというニュースが数年前に伝わるや、日本のイカ船団が大挙して八〇〇〇キロの海路を遠しとせずにやってきたということである。一九七二年には試験的に七隻が出かけたにすぎなかったが、翌七三年には七三隻、七四年には実に一五九隻もの船が押しかけたという。このため、三年目には早くも漁獲不良に陥ってしまった。この性急な日本船団の行動に、地元のニュージーランドが黙っているわけがなく、新聞や外交ルートを通じて苦情、不満を表明している(朝日新聞/七四・六・二一夕刊による)。ことのあらましは以上であるが、この例は、イザヤ・ベンダサン(『日本人とユダヤ人』の著者)が指摘した農耕民族のなだれ現象が、「漁業の民」にも完全に受け継がれていることを示していて興味深い。