こうした低成長経済において、最も困るのは、過去一五年くらいの間に、マクロ経済の大成長に乗じて、次から次に新しい製品系列に参入した大企業であろう。ある大手の電機メーカーは、六三年から七三年の一〇年間に売り上げが三二二七倍になっているが、この間のいわゆるGNPデフレータは〇・五六二である。したがって、これで割りもどしてやると、売り上げは、実は一・八九倍にしかなっていない(この議論は、商品の実質値上げとGNPの名目値が概略等しいと仮定してもよいほど多機種、多分野へ製品を出している会社にしか当てはまらない)。この間に、この会社の提供する(本質的に区別できる)製品系列は、約一万点から約二万点へと二倍になっている。すなわち、平均的にいえば(インフレを割りもどした)、実質的には一商品あたりの平均売上高はむしろ下がっているのである。この会社では、既存製品を伸ばすかわりに、本質的には製品系列を次から次に加えることによって会社全体の伸びを維持してきた、といってもよい。

この結果、今日では、全体としてはまだまだうまくいっている大企業でも、多大の不採算製品をかかえ込むことになってしまった。