イギリスとオランダに本拠を置くユニリーバは、途上国や未開発国に小分けの石鹸やシャンプーを売る前に、まず浄水器を寄付する。きれいな水を使う保健衛生上のメリットや気持ちよさを20年かけてじっくり啓蒙して、ビジネスを根付かせるのだ。根気強く啓蒙するスタイルは、布教活動とよく似ている。

日本企業にはこうした長期的な戦略が欠落しているし、BOP市場での売り方も知らなければ売るモノも持っていない。だから海外進出したといっても、日本で開発した商品で何とかなる先進国か、新興国の富裕層相手にしか商売ができていない。参入10年目にしてインドネシアでシェア3割を占めるようになったユニ・チャームや、欠乳予防に役立つ乳酸菌飲料を毎日デリバリーするスタイルを新興国にうまく持ち込んだヤクルトなどは、稀有な成功例だ。

40億人のBOP市場は手も足も出ないとして、日本企業にとって大事なのはその次のセグメントだ。年収3000ドルから2万ドル(5000ドルから3万5000ドルという統計の取り方もある)のミドルクラスは全世界で約14億人いる。まずは日本の人口の10倍以上もあるこのマーケットを取り込めなければ、日本企業は世界で約7億人しかいないアッパークラスのカテゴリーの人々を相手にするしかない。

今、世界の中で急成長しているのは、BOPやミドルクラスを数多く抱えた巨大な人口を持つ新興国や発展途上国であり、日本企業は本腰を据えてそこに飛び込む決意をしなければならない。