菅直人元首相の「(日本維新の会は)ヒトラーを思い起こす」というツイートが、政治問題として多くのメディアで報じられている。ジャーナリストの尾中香尚里さんは「ヒトラーになぞらえた批判はローマ法王さえ行っているごく普通の政治論評。立憲民主党は維新の抗議を真に受ける必要はない」という――。
2008年3月28日、ポーランドのアウシュビッツのメインゲート
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菅氏「維新の弁舌の巧みさはヒトラーを思い起こす」

立憲民主党の菅直人元首相(党最高顧問)がツイッターで日本維新の会を批判する投稿をしたことが注目されている。松井一郎代表ら維新幹部が発言にかみつき、メディアも面白おかしく(その多くが菅氏をやゆするトーンで)はやし立てている。

筆者は思わず苦笑してしまった。すでに政治の中心から距離を置いている菅氏だが、その勝負勘はまだ健在だったかと。

発言の品の善しあしは置くとして、現在の政治状況をとらえる意味で、菅氏の問題意識は正しい。夏に参院選を控える2022年、菅氏が属する野党第1党・立憲民主党が今戦うべき相手は、岸田政権以上に日本維新の会だということを、菅氏は正確にとらえていた。

「『維新』と戦う立憲有志の会の準備をしている」。菅氏がこんな投稿をしたのは、衆院本会議で代表質問が始まった1月19日のこと。「次の総選挙は自民党はもとより、東京に進出を図る維新との戦いだ。立憲民主党は政策的に真正面から維新と戦わない限り東京は維新に席巻されてしまう」。投稿の言葉には強い危機感がにじんでいたが、菅氏はさらに21日、維新創設者の橋下徹氏の名前を上げつつ「主張は別として弁舌の巧みさでは第一次大戦後の混乱するドイツで政権を取った当時のヒットラーを思い起こす」と記述した。