多様なニーズに応える必要がある

4月末、直嶋正行経済産業相はインドを訪問。主要閣僚もインフラを巡る新興国詣でを行い、「官民一体」の態勢が整いつつある。(ロイター/AFLO=写真)

4月末、直嶋正行経済産業相はインドを訪問。主要閣僚もインフラを巡る新興国詣でを行い、「官民一体」の態勢が整いつつある。(ロイター/AFLO=写真)
――6月に、政府が「新成長戦略」をまとめた。そこでは、原子力や石炭火力発電の主戦場が海外へのインフラ輸出とされている。これへの対応は。

中国やインド、ベトナムなどアジア経済圏は将来的に高い成長力が見込まれます。半面、国内市場は縮小気味です。当然、国内需要だけを頼みにした経済成長には限界があります。そこで、アジア経済の繁栄に役立つ電力を中心にしたエネルギーインフラを海外展開していくことは重要だと思います。

原子力にしても、火力にしても、日本の技術水準は世界でもトップレベルです。こうした強みを生かして海外に進出することは、地球規模での温室効果ガス削減に貢献するだけでなく、海外における日本企業の需要開拓にもつながる。日本の持つ技術に加えて、人材とかノウハウでの貢献も含まれる。私ども電気事業者としても、国の支援を仰ぎながら積極的に協力していきたい。

アジアへの原子力輸出においては、国、メーカーなどと一体となって受注活動を進めていくことが必要ですが、民間だけでは負いきれないリスクも存在します。公的機関によるリスクテーキング、あるいはファイナンス機能の確保など、官民一体として推進できるように政府には働きかけていきたい。

――アラブ首長国連邦(UAE)とベトナムの原発受注で日本は韓国とロシアに2連敗を喫した。その教訓は生かせますか。
アメリカでは原発30基以上の建設計画が持ち上がっている。(Bloomberg/Getty Images=写真)

アメリカでは原発30基以上の建設計画が持ち上がっている。(Bloomberg/Getty Images=写真)

実際、受注できなかったわけですが、その背景にはどうリスクを考えるか、どんな価格なら引き受けることができるかなど、さまざまな条件があります。さらに、UAEとベトナムでは、エネルギーの供給構造、インフラなどによってニーズが異なります。電力会社が関与することで、ユーザーの視点から受注活動が可能となり、ベトナムの原発2期工事の受注は日本にとって大きな試金石となります。

今後、アメリカ、ヨーロッパ、新興国と世界各国で原発の建設ラッシュが続くと予想されます。インフラ輸出の面では発電所だけでなく、送配電ネットワークも必要になります。そうなれば、スマートグリッド(次世代送電網)のように、その先のビジネスチャンスにもつながるはずです。

(岡村繁雄=取材・構成 尾崎三朗=撮影 Bloomberg/Getty Images、ロイター/AFLO=写真)