中国経済はこれからも拡大を続けるのか。元みずほ証券シニアエグゼクティブの土屋剛俊さんは「不動産大手・恒大集団の経営危機は、不動産バブル崩壊の予兆だ。中国政府がこれまで延々と続けてきた『GDP成長率の維持政策』も、同時に破綻の危機にある」という――。
中国恒大センターの入り口
写真=iStock.com/LewisTsePuiLung
※写真はイメージです

恒大集団のデフォルトは氷山の一角にすぎない

中国の不動産大手・恒大集団の経営危機が市場の注目を集めている。事態はどれくらい深刻なのだろうか。地獄の断末魔の叫びの第一声なのか、大山鳴動して鼠一匹なのか。

新聞やテレビの報道では、楽観的な見方が多い。たとえば、よく見られる論調は「恒大の債務自体は大きいが、有利子負債は10兆円程度で、この程度の額は中国政府がその気になれば余裕で処理できる」というものだ。

本件を考える上で重要なのは、一つの不動産会社が倒産するかどうか、ということではない。恒大が潰れるかどうかは話のきっかけにすぎず、ある意味で些末な問題である。

後述するように、中国の不動産市場は、高騰しすぎて「バブル」になってしまった。この市況が崩壊した時、中国経済にはどのような影響を与えるのか。習近平国家主席が率いる中国政府はこの問題を適切に処理することができるのだろうか。

本稿では、中国政府が不動産バブルの崩壊を回避しつつ価格を正常化させる具体的なプロセスとその実行可能性について検討してみたい。

そもそも中国の不動産はバブルなのか

中国の不動産市場全体について楽観派の主張は、「不動産市況については、中国だけはコントロール可能で、暴落は回避できる」というものだ。

その主な根拠は、中国は日本のバブル崩壊やサブプライムの問題を十分研究しており、かつ中国政府に体力もある。そのためシステム不安や経済の混乱を招かずにこの問題を収束させることが可能だ、というものだ。

一見すると説得力があるように思えるが、精神論にすぎない。筆者はさまざまな文献を探したが、「具体的にどうするのか」という踏み込んだ説明しているものは見当たらなかった。よって楽観論に安易に与することは危険である。