大前 実は日本では常に高齢者に有利な決定が行われてきました。年金など若い人は払っただけもらえない。しかし彼等は選挙に行かないので無視されてきたわけです。わたしは政治に関心を持たない彼等の一斉蜂起こそが改革につながると思っています。菅首相にアタリさんのご著書を理解できるだけの知性があれば、すぐにでも彼のもとに駆けつけてレクチャーするのが私の使命でしょう。ただ、菅首相をはじめとする政権担当者たちのベーシックな知的能力に問題がある。日本の政治家は自分の頭でものを考えるという訓練を怠ってきました。それこそが問題なのです。

EU発足の際に活躍したジスカール・デスタン(フランス元大統領)やシュミット(ドイツ元首相)などは輝かしい知性の持ち主でした。もちろん、ミッテラン政権を支えたアタリさんをはじめとして、ヨーロッパの指導者たちは国境を越えた公益を考えることができる人物でした。

アタリさんのご尽力もあって、ドイツ統一を成し遂げた旧西ドイツのコール首相も思慮深い人物だったと思います。ヨーロッパの偉大な政治家たちには目先の利益を超えた長期的な利益を考えることができる知性が備わっていたと思いますが、最近のリーダーを見ているとその知性の輝きが薄れてきたような……。

(ジャック・アタリ氏との対談より)