この世には同じ目的をまったく異なった手段で達成できることが多い。膠着状態に陥るのは、「これ一つしかない」と思い込んでしまうことによる場合が多い。同じ自殺でも、世間一般で知られているだけで、十通りは下らない“やり方”というものがある。恋心を伝える方法だってワンパターンではないはずだ。こうした世俗的なことになると「代替案(オルターナティブ)」というものがたしかに存在し、しかも甲乙つけ難いような名案が出てくることもまれではない。ところがいざ事業戦略ということになると、途端にオルターナティブが出なくなってしまうらしい。

後に言及するように、優れた教育制度の確立に投資をしても、警察力に投資をしても、結果的には“犯罪を少なくする”ことができる。しかし、前者が漢方薬的効果であるのに比して、後者は対症療法的劇薬である。過剰投入はシステムそのものを破壊することにもなりかねない。

このように、代替案というのは、同じ目的に対する異なったアプローチの方法を言う。先の例では、「犯罪を少なくする」という目的に対して、「警察」と「教育」の強化が、それぞれ代替関係にある、すなわち代替案となっているのである。