サラリーマン化した企業の管理者で、決戦時の緊迫感に欠けている人に多く遭遇するが、製品・市場戦略を練る営業部長と、実際の戦場における戦略を立案する参謀の考え方は、本来、驚くほど似ているのではないか、と私は思う。シェア競争においては“完全な”市場戦略を立てても意味がない。シェア(市場占有率)の分母は己れと相手の売り上げを加えたものであるから、相手より寸分たりとも有効な戦略であれば、相手のシェアを抜くことができる。しかも、どんな優秀、完璧な戦略といえども、流動する市場動向を逃しては効果がないから、タイミングが重要な因子となる。

こうして「相手よりもほんの一枚上をゆく市場戦略を、タイミングよく実施することが勝利のカギである」という〔戒2〕が生まれる。戦場における参謀の役割もこれと全く同じで、相手の戦力、作戦をよく知り(あるいは冷静に予想し)、その一枚上をゆく戦略をつくればよい。特に、わがほうの勢力が一見劣っているかに見える場合には、ムダのない人員配置、行動指令が不可欠で、最終的には一兵卒でも残ったほうが勝ちということになる。このときこちらの兵を失うことを恐れ、勇断を引き延ばしたり、問題に毅然と立ち向かわなければ、足もとをすくわれるであろう。こうした判断力のカギとなるのは、どのぐらい完全主義を捨てられるか、ということになる。