一杯のコーヒーの風味を基本的に決定する変数というと、いったい何があるだろうか。

そう思って考えてみると、変数はびっくりするはどたくさんある。まず第一に、コーヒー豆の種類と質がそれだ。次いで、豆の煎り方の方式、挽き方の程度、挽いてから沸かすまでの時間の長さ、水の硬度、水温、挽いたコーヒーと水(または蒸気)を接触させる方式、沸かしたコーヒーの保温温度、沸かしたコーヒーを飲むまでの時間の経過……。際限がないが、これだけ並べても、まだ、一杯のコーヒーの味を変えうる変数を挙げ尽くしたわけではないのである。

こうした変数のうち、いくつかはメーカーの力ではいかんともしがたいもので、戦略的自由度の対象にはならない。ほかのもの、たとえば水の硬度などは、メーカーの力が及ぶものとして考えてよさそうだが(たとえば、器具に軟水化フィルターを組み込んでやるなど)、慣習的に守備範囲外、と片付けられているものである。

これは、“風味”というユーザーの目的関数の拡大に役立つ戦略的自由度を十分に利用し切っていないことを意味する。パーコレーターにするか、それともドリップ式にすべきか、ユーザーはガラスを喜ぶか、それともアルミか、などと、ありきたりの考え方に堕すことなく、われわれは未開拓の自由度を探し出し、そこにどんな可能性が秘められているか、知恵を絞ってみるべきなのだ。