真に自由な戦略的思考をする参謀なら、自ら選択することができる代替案(オルターナティブ)が何であるかを常に理解し、それらの間の損得勘定を怠らないはずである。だから、状況の変化にも柔軟に対応できるであろうし(状況というのは変化するものであるゆえ)、その柔軟性のゆえに戦いに勝てる可能性を自ら高めることができるのであろう。代替案を探るときには、「What,If……?」という設問のしかたをするのが普通である。すなわち「もし状況がこうなったら、どのように考え(あるいは行動、反応し)たらよいか?」ということである。

ところが、われわれは考えることに対して無精であったり、考えが及ばなかったりで、なかなか「What,If……?」ごという考え方をしない。これは、物の考え方そのものに対する自信のなさに起因しているので、社会的背景によるものではないが、日本人が、特にこの「What,If……?」ごが不得手な背景として他に二つばかり要因があるのではないかと思う。

その一つは、われわれが今日まで中国や西欧の国から一〇〇〇年以上にわたって文明を受け入れつづけてきたことによって「解答がすでに存在していることに慣れ切ってしまっている」のではないか、という点である。