戦略立案において、まず第一に「あれもダメ、これもダメ……」と考え、次に「じゃあ残るのは何だ?」という考え方をしたら、まず現状打破はできない。コンサルティングをしていて、会社の管理者と話を進めているとき、私がいちばん気になるのがこの点である。何かその人の担当領域に問題がある場合、私は、まずその間題を担当者がどのような形でとらえているかを探る。次に、その間題の解決策として、彼の考えていることを尋ねる。このときほとんどの人が「まあ現状ではどうしようもないんですわ。ウチのような会社ではトップの現状理解も乏しいし、従業員の質も落ちるし、このままで見ていたら、ジリ貧なのはわかっているんですがね……」

私は外部の者なので、こうしたときに、第三者としての立場がとれる。そこで次のように聞くことにしている。

「今何もできない、と思うに至った制約事項とは具体的には何と何ですか?」

こうすることによって、われわれの間に制約条件の具体的な定義づけができる。次に、

「これらの制約条件が一切ないとしたら、どんな可能性が出てきますか?」

例えば、人、資金、のれんなどの面で動きがとれなくなっているときに、そうしたものがふんだんに使えるとし、かつ現在問題となっていることの解決を図る、ということを空想してみよう、と持ちかける。すると、「まあ望ましい解決策としては……」とか「理想的には……」という形でこれらのものが描き出される。一足飛びにそういう姿にはならずとも、理想的な姿が認識されれば、従来、制約条件となっていたことが、理想を達成するための障害物として把捉される。

そうなると、今度は障害物をどのようにして除けばよいかということを集中的に考えられるし、組織の中で、障害物が共通の認識事項となった場合には、ベクトル合わせが可能となる。従来のように、何が理想像で何が障害物かという共通の認識がなかった場合には、組織内のベクトルはあらゆる方向に向かい、事態改善のための第一歩を踏み出すことすらできない。特に、このような形で制約条件に挑戦しはじめてみると、意外にも実はそれほど大きな制約条件でなかった、ということが生ずる。