理論的には、交通の安全に寄与しうる改善策は、数え切れないほど数多い。たとえば、道路を良くし、信号を改良することも、安全につながるのだから。とはいうものの、そのすべてが、自動車メーカーの守備範囲には入らない。実際には、自動車メーカーが採用できる戦略的行動には、限りがあるのである。だから、費用対効果や競合メーカーが打ち出すに違いない報復的な対策のことを計算に入れると、二、三の“軸”を選んで改善を追求する戦略のほうが、ずっと希望する成果を得やすい。これは自明の理だ。

私が使っている“戦略的自由度(ストラテジック・デグリーズ・オブ・フリーダム)”という言葉(SDFと略称)は、こうした戦略が現実的に展開できる軸のことを指している。(中略)

SDFの概念の決定的要素は、とりも直さず“目的関数”の決定的要素であり、われわれが最大限に大きくしたいと望む価値、ないし変数である。たとえば、メーカーの場合、その目的関数は利益ということになろうか。もっと具体的に表現するならば、少なくとも向こう五年間、株主たちの投資額の一五パーセントに相当する利益を上げること、とでもすればいいだろう。

同様に個人としての経営管理者の目的関数は、業績か、でなければ四十歳前に百万ドルの財を築くこと、ではなかろうか。顧客の目的関数は、ごく単純に、購入した製品から彼らが探し求めているもの、期待しているもの、と解釈すればいいだろう。