大前 今から一六年ほど前の九五年に、日本では銀行の破綻が相次ぎ、「流動性の危機」に陥りました。窮地を打開する最も手っ取り早い方法は、アメリカの国債を売り払うことでした。しかしアメリカは、日本が米国債を処分することは一切認めないと通告してきた。日本では自国発の世界金融危機は何としても回避すべきだと考えられていました。そこで日本政府は米国債を売却するのはあきらめ、自国民から不足した資金を借り入れることにしたのです。これこそが今日につながる日本の国家債務危機の元凶です。

いい換えると、これは自国発の世界金融危機の勃発を阻止する措置であると日本では吹聴されてきたわけですが、このスローガンゆえに我々は苦しむことになった。そして将来世代からの資金の借り入れが始まったのはこの瞬間からです。その後、日本の国家債務は恐ろしいペースで膨れ上がっていった。

それまで日本の財政状態はそれほど悪くありませんでした。ですから、アメリカが日本の自由を束縛したことが、日本の国家債務危機の元凶といっていい。当時のアメリカは日本に対して恐ろしく威圧的でした。今日でも、日本には危機打開のために利用可能ツールはすべて利用しようという気構えのある政治家は存在しません。

(ジャック・アタリ氏との対談より)