リーダーの要素はビジョンと個人的魅力にあり

ここで重要なのはメンバーが自律的にリーダーについていく原動力が、ポジションや権限などによるのではなく、リーダーの志と掲げるビジョンおよび個人的な魅力であることである。そうした力によって導かれて、メンバーは自らの努力を提供し、リーダーのビジョンを達成しようとする。それがリーダーシップの原点であり、そうしたリーダーシップによって組織化されている企業は、そうでない企業に比較して戦略達成の可能性が高いのである。

その意味でリーダーシップを基軸に成立している組織はより強い組織であり、日本企業でも、人がビジョンと人間的魅力によって他人を率いるという本来の意味のリーダーシップを重視し、こうしたリーダーシップが多くの場面で見られる組織を目指すべきだろう。

第二がメンバーの自律的発想である。メンバーの考える力といってもよい。発想力、工夫力ということもできよう。いずれにしても、現場で顧客や市場と直接向き合っている人たちが、自分の経験とアイデアをベースにして、物事を考え、発言するプロセスである。

残念なことにしばしば、メンバーが自律的に発想するかについては、それが個人の能力や意識の問題として扱われることが多い。自律的な個人であるべし、というアレである。

ただ、考えなくてはならないのは、メンバーが自律的に考えるという現象は組織として支援すべき面が多いことである。従業員から出てくるアイデアを建設的に評価し、それを育てていくという体制が整わないと、どんなに自律的な個人でもいずれ発想や工夫をやめてしまう。働く人に自律性があるのは組織内基盤プロセスがうまくいった結果だと考えて、組織としてこれを支援することが必要なのである。

そして、最後が学習である。組織内に、集団として個人として学びがあるということは重要なことである。企業変革の源泉は1人ひとりの学びとその共有である。これがないと現在の知識で新たな環境に立ち向かうという難しい戦いを強いられることになる。

なかでもこれまでわが国企業は、主に個人の、それも若手が一人前になるまでの学習には大きな支援を行ってきた。だが、少し前の本連載にも書いたように、いったん一人前になった人材がどれだけ継続的な学びを行っていたか。継続的な学びを支援してきたか。さらに個人が学習したことを、組織としてどれだけ共有する努力をしてきたか。こうした点にも、より注意と支援を行っていくことが必要だろう。

今は組織力の強化へ注力すべき時期である。もちろん、戦略構築を忘れてよいという意味ではない。ただ組織基盤がないと、どんなによい戦略があっても実現できないし、またいずれは良い戦略も出なくなるのだ。ここ暫くないがしろにしてきた、組織へ眼を向け、特に基盤的なプロセスを維持する必要があるように思う。また、そこには構築すべき幾つかの新たな基盤プロセスもあるのである。12年は組織論の時代の始まりでなければいけない。

(大橋昭一=図版作成)