公告後2カ月以内に申し出なければ返還不可

振り込め詐欺の被害件数は、激減しました。警察庁によれば、2009年1月から3月までの総被害件数は2310件。2008年は同じ時期に5618件が発生していますから、半数以下となっています。

犯人グループの相次ぐ摘発や警察官によるATMの巡回の強化、特殊な電波を出してATMコーナーで携帯電話を使えないようにする、といった様々な対策が功を奏した形となりました。

けれども、詐欺師は絶滅したわけではありません。手口は悪質になっています。最近の特徴は、法律知識の乏しい一般人を共犯に利用するケースが増えていることです。

「アルバイト募集」のチラシを見て、面接に行くと、「銀行で口座をつくってきてください」「携帯電話を契約してくれば、3万円差し上げます」などと言われる。怪しいと思っても、数万円の日当のために口座や携帯電話を詐欺師に渡してしまう――。

これらは、携帯電話不正利用防止法や犯罪収益移転防止法の違反として最高2年以下の懲役刑を科せられる恐れがありますし、悪質な場合は詐欺の共犯ともなります。それでも、まるで副業のように詐欺の片棒を担ぎ、逮捕される人が増えています。

最新のニュースをきっかけにする手口も巧妙化しています。2009年3月には市役所の職員を騙り、「定額給付金の手続きが終わっていない。携帯電話を持ってATMに行くように」とする手口が全国で相次ぎました。さらに5月には新型インフルエンザの流行に乗じて、「豚インフルエンザの薬を販売しています」などと架空の薬の購入を勧める手口が報告されています。

図:2カ月以内に申請しなければ救済法の適用外に!
図を拡大
図:2カ月以内に申請しなければ救済法の適用外に!

電話でお金の話をしない、大金を安易に振り込まない……。被害を未然に防ぐには、そうした心構えが大切ですが、もしだまされてしまったら、できるだけ早く警察か金融機関に通報することが重要です。2008年6月に施行された振り込め詐欺救済法により、被害金を取り戻せる可能性があるからです。

救済法では、警察の情報提供に基づいて、詐欺の疑いのある口座をただちに凍結できるようになりました。その後、預金保険機構のホームページで凍結口座の残高や口座番号が公告されます。振り込んだ口座の公告後2カ月以内に申し出れば、被害金が返還される仕組みとなっています。ただし、被害者の人数と被害額に応じて残高の分配が行われるので、全額が戻ってくるとは限りません。また、期間内に申請しなければ、返還を受けられません(図参照)。

さらなる問題は預金保険機構のホームページでしか公告されないため、被害者への周知が行き届かないことです。機構によれば、救済法に基づく2008年度の返還額は6億5700万円と全体の56%に留まっています。インターネットに不慣れでも諦めないでください。振込先の金融機関に依頼すれば公告の有無を調べてくれます。

※すべて雑誌掲載当時

(構成=山川 徹)