会社の経営は料理と似ている

味の素社長 伊藤雅俊
いとう・まさとし●1947年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。71年味の素入社。99年取締役。味の素冷凍食品社長、味の素専務を経て2009年6月より現職。開高健のファンで、作品に登場する店を訪れることも。

料理の本質は、組み合わせである。

素材の味、香り、色、食感、調理の手順、テーブルウエア、これら多種多様な要素が持つ個性を、その日のお客様の嗜好に合わせて組み合わせていく。それがお客様にとって好ましいものであったとき、お客様は喜んでくださる。

私が仕事上の必要から料理を始めて、かれこれ30年になるが、いまでは和洋中いずれのジャンルも、そこそこつくれるようになった。自宅にお客様をお招きするときは必ず自分で料理する。そして、社長に就任してからは、会社の経営は料理とよく似ていると思うようになった。

料理と同じように、事業もすべてはお客様から始まる。お客様に喜んでもらえたとき、お客様の役に立ったとき、その大きさに見合った対価、報酬を受け取ることができる。そのことを理解したうえで、自分たちが持っている素材の個性を深く知り、それをうまく組み合わせていくことが大切なのである。

2009年、味の素は創立100周年を迎えた。私は、この記念すべき年に社長を拝命したわけだが、振り返れば、弊社は創業の原点に、「新価値創造」と「開拓者精神」という、ふたつの大きな特色を持っている。

東京帝国大学の池田菊苗博士が5番目の味覚として「うま味」を発見したのが、1908年。それを鈴木三郎助が、「うま味調味料」として世界で初めて商品化し、創業したのが1909年。池田博士は「なぜうまいのか」という問いを立て、うまさの本質を深く探求された。その結果、うま味の本質はグルタミン酸ナトリウム(アミノ酸の一種)の存在にあることを突き止められた。うま味という新しい価値の創造だ。一方の鈴木三郎助は、このまったく新しい価値を、強烈な開拓者精神によって商品化し、世の中に広めた。