草加さんのアドバイスを受けながら、声をかける距離や角度を変えたり、話しかける内容を変えたり自分なりに工夫してみた。が、やっぱりダメ。20人に声をかけたあたりから、「はやく成果を出さなきゃ」と焦ってきた。すると、見事に相手の反応も悪くなっていった。

結局、30人に声をかけて成果はゼロ。苦い気持ちで僕のナンパ初挑戦は終わった。ずっと女性を探し続けたせいか、目が痛い。ただ、成果は出なかったけれど、何も残らなかったわけでもない。それは自分とは縁遠かったナンパを30人もやったという達成感だ。

坐禅、引っ越し、ナンパと身をもって体験し終えた今、以前と何が変わったかといえば、結果はともかく「これだけの挑戦をやり遂げた」という達成感を持てたことである。自信の根拠ができた、と言ってもいいかもしれない。

もう一つ変化したことがある。仕事が速くなった。以前は仕事を先送りばかりしていたけれど、今は前倒しで取り組むようになったのだ。これは坐禅の影響が大きいと思う。うだうだ悩み迷うより、まずは目の前の仕事に一生懸命取り組むことが大切だと。そして、作業量や締め切りの大変さは何も変わらないが、仕事がラクに感じられるようになった。

この体験取材で得た成果は、きっと仕事にも恋愛にも反映できると思う。読者の方のためにも、チャンスをくれたデスクのためにも、どんどん新しい企画を立てて誌面を面白くしていこう。恋愛も積極的にいこう。そう決意したところで、なぜかデスクから呼び出された。

「内林君、来月付で『プレジデントファミリー』に異動になったから。頑張ってね」

えっ……(汗)。

そんなわけで体験取材の成果は今後、兄弟誌の「プレジデントファミリー」でお見せしていくことになりました。

※すべて雑誌掲載当時

(松田健一=撮影)