戸建て住宅の市場でいうと、同じ関東圏でも群馬や栃木、茨城では、土地を買ってハウスメーカーや工務店で住宅を建てる「注文住宅」市場になっている。一方、東京、千葉、埼玉、神奈川の首都圏では、圧倒的な「建売住宅」市場になっている。ここでは、首都圏の建売住宅をメーンに説明していきたい。

首都圏では、「パワービルダー」の売れ行きが好調だ。ビルダーというのは、ビルもマンションも戸建てもやっている総合デベロッパーと違い、主に新築の建売住宅を専門に供給している事業者のこと。なかでも、総合デベロッパーよりもはるかに多くの建売住宅を販売している事業者をパワービルダーと呼んでいる。

売れ行きが好調な理由は、「低価格」でかつ「品質の安心感」のあるものを供給していることに尽きる。ユニクロやイケアと同様に、単に安いだけでなく、企業としての工夫があって、一定期間品質を保てる商品をきちんと提供し、合理的にコストダウンしていることが説明できる売り方をしている。

まず、住宅の材料を規格化して大量注文することで材料費を下げる。例えば、屋根の部材を統一したり、窓の種類を絞って特定メーカーに発注したり。さらに、プレカット工法を利用して、機械加工された各部材を現場で組み上げるのだが、無駄が出ないように計算された共通部材を使うことでコストダウンを図る。

次に、工期を短縮することでコストを下げる。建築の工期が長いほど、人件費もかかるし、その間も融資に対する金利を負担し続けなければならない。工程をマニュアル化することで、無駄なく一定の品質で、短期間で組み上げられるようにするわけだ。注文住宅なら3カ月や半年かかるだろうが、パワービルダーの工期は、2カ月前後が多いと聞いている。

こうして低価格が実現し、例えば東京を基点とした半径20キロから30キロ圏内なら、新築の建売住宅が2000万円台後半で売られている。だから、その周辺に住む既婚者、特に20代後半の若い層に人気があるのだ。