住宅の販売手法のひとつに、コンセプトを際だたせた物件をつくり、それに魅力を感じる買い手を集めるというやり方がある。特徴があれば必ずしも売れるというわけではないが、今注目されるコンセプトとして、2つのキーワードがある。それは「Wエコ」と「子育て」だ。

1つ目の「Wエコ」とは、「エコロジー」と「エコノミー」の両方のエコを満たしたいというニーズが高まっていること。より環境に優しく、経済的なものを求める今の消費者志向にマッチした物件は人気を得ており、各社とも新商品の開発に取り組んでいる。

特に、住宅を買った後のランニングコストを下げられる点が、消費者には魅力的に映るようだ。これまでは、住宅を買うときの初期コストにしか関心がなかったが、住んでいるときの生活コストも考えて住宅を買うという発想が広がりつつあるのかもしれない。

Wエコを加速させるさらなる要因が、売電価格の増額だ。太陽光発電による余剰電力を電力会社が買い取る際の価格が2倍になったことの影響が大きい。経済産業省の試算によると、標準的なシステムの導入費用が、新築住宅では約185万、中古住宅では改修費も含んで約225万円。この導入費用は、売電額と国や自治体からの補助金を合わせて、新築では約10年、中古では約15年で回収できるということだ。

具体的にエコ住宅の事例を挙げると、太陽光システムか燃料電池を選択できる建売住宅や、太陽光システムの電力を共用部分の電気設備に利用したり、省エネ性の高いサッシや給湯機を採用したり、あるいは室内に自然の風が通り抜けられるように設計するなどした新築マンションがある。

2つ目の「子育て」は、以前から注目されていたキーワードだが、子どもとのコミュニケーションがとりやすい間取りという従来の観点に加え、子どもの自発性を育てる仕掛けが加わった物件が出てきている。

例えば、リビングの横に子どものためのコーナーを設けて、壁にホワイトボードや収納棚を設置したり、このコーナーのみフローリングをムク材にしたり、といったもの。子どもが自然と壁に絵を描くようになったり、絵本などを棚に片付けたりすることを狙っている。

ほかにも、自分から進んでものごとに取り組む習慣をつけるために、どういった設計がよいのか研究している事業者は多い。

例えば、階段を上がった2階のちょっとしたスペースにデスクコーナーを設け、自然に家族が集える空間をつくったり、母親がいることが多いキッチンの周りにデスクコーナーを設けて、子どもがどこでも勉強できるように仕掛けたりと様々な工夫をこらすケースもある。

こうした工夫のあるプランは、子育て世代には、とても魅力的に感じるようだ。ただし、こうした仕掛けを取り入れたスペースに面積を割くことには賛否もあるようで、まとまった棟数を販売する場合は、一部にだけこうしたプランを取り入れ、残りは一般的なプランで販売するというやり方が多く見受けられる。

※すべて雑誌掲載当時