パナソニックが2011年4月にリリースした洗濯機「プチドラム」は、11年9月時点で当初目標を4割上回る売り上げを計上した、単身者・DINKS向けのコンパクトな家電である。

パナソニック
商品グループ
リビングアプライアンスチーム
主事
 小杉 彩

青山学院大卒。2002年の入社以来、マーケティング本部で洗濯機・食器洗い機、アイロンを担当。30歳前後をターゲットとした「ナイトカラーシリーズ」を立ち上げる。08年より主事。

「入社後の早い段階から、自分の世代に合った家電がない、とはずっと感じていました」――そう語る小杉彩氏(32歳)は、斜めドラム式洗濯機の初代(2003年)からマーケティングを担当。プチドラムのプロジェクトリーダーとしてコンセプトの段階から開発を主導した一人だ。

「内側から見ても(同社の)家電が素晴らしいことはわかるんですが、どれもファミリー寄りでサイズが大きすぎるし、価格もちょっと手を出せない。独身の頃も結婚後も、自分向きではないな、と」

マーケッターである小杉氏にとっての大きな“勝負どころ”は、商品パブリシティの日。新商品を報道関係者にお披露目する、いわばデビュー戦である。新市場の開拓者となったプチドラムのそれは、11年の3月4日だった。

「この日を皮切りに、世の中に『こんな商品をつくってました』『これであなたの生活はこう変わります』とお伝えできるんです。だから、その日までにどれだけ準備できるかがすごく重要。その一方で、世の中に商品が広がっていく転換点でもあります」(以下、すべて小杉氏)

パブリシティの日程は開発当初から見当をつけているが、具体的に決まるのは約1年前。そこから逆算して、もろもろのスケジューリングが決まる。が、「効率にはうるさいほう」と自己分析する小杉氏は、まだ商品のコンセプトしか決まっていない段階でも、このデビュー戦という“締め切り”を念頭に置くという。

「個人的に、『締め切りを守らない』というのは気分が悪いから、締め切りは何となく自分で決めて、そこから逆算して間に合うようにしています。締め切りのない仕事への対応の仕方で、その人の仕事へのスタンスがばれちゃう」