輸出型の製造業は人員調整や生産調整を行い、中国を中心に輸出も増えているために状況は改善したが、今後、内需型の非製造業は苦しくなってくるだろう。百貨店業界が代表的で、三越では先頃、1500人の希望退職者があった。失業率ピークの5.7%を抜くかどうかはわからないが、内需型産業への影響が出てきて、失業率はジワジワと上がっていくのではないか。

そして、今後は正社員への解雇圧力がさらに強まるだろう。人件費削減のためやむをえず正社員をリストラして非正規社員に振り替える動きが強まる可能性もある。

鳩山政権の行った緊急雇用対策はそれなりの効果を上げていると思う。しかし、それらはあくまでも緊急措置であって、中長期的な雇用安定策は手つかずの状態だ。

ハローワークで、職業相談、住居・生活支援の相談・手続きができる「ワンストップサービス」は一歩前進だが、アメリカのように職業訓練ができる学校や商工会議所などの窓口も活用して産官学が協力するシステムを整備する必要がある。

労働政策には失業対策などの「消極的労働市場政策」と、訓練・教育などで雇用創出を促す「積極的労働市場政策」があるが、日本は後者への財政支出が先進国中最低のグループに属するほど少ない。ハローワークに限らず、地域や民間活用を基本とする政策に転換すべきだ。

さらに、雇用の受け皿となるべき経済成長戦略が欠けていることが問題だ。旧来の産業構造を変革し、環境や農・食、ケア産業などの分野で産業を育て、雇用の転換・創出を図ることが必須だ。

そして、働く側の意識転換も必要だ。若い人は安定志向が強まっているようだが、今後、内需が縮小する中、日本はアジアへ展開していかなければ生き残れない。新たな事業や企業を興したり、海外へ進出するチャレンジ精神がなければ、ゆでガエルになってしまうだろう。

※すべて雑誌掲載当時

(構成=吉村克己)