自宅でパフォーマンスを上げるコツ

さて、在宅勤務に適しているとして申請が通り、家庭でも理解が得られたとする。どうしたら在宅でより効率的に仕事ができるだろうか。

まず、いつ在宅勤務をして、その日にどんなタスクをするのかをハッキリさせることだ。週の中で在宅勤務をする曜日を設定しておくとよい。その曜日は会議などを外し、レポート作成など没頭したい仕事をまとめて入れるようにする。

オフィスからの連絡が終始気になり、頻繁にメールチェックしなければならない状態だと集中力が低下し、在宅勤務の意味がなくなる。メールチェックをする時刻を決めておき、「私は10時と15時にメールチェックをします。ただし、緊急の場合は電話をしてくれればいつでも応えます」などと職場のメンバーに伝えておくとよい。

在宅勤務の成功は、管理者の理解と管理能力に大きく左右される。日本でも海外でも、在宅勤務制度の導入に一番抵抗するのは直属の上司である。「目の前にいない部下」を管理・評価することができないマネジャーは少なくない。これは在宅勤務だけの問題ではない。「観察」ではなく「成果や貢献度」で評価するマネジメントスタイルを確立できるか否か、労働時間の長さではなく仕事の成果で評価できるか否かという大きな課題につながっている。

十分な説明を行っても上司が在宅勤務制度に消極的であるならば、その部署における導入は見送ったほうがよい。在宅勤務者の評価が不当に下がってしまう恐れが強いからだ。

在宅勤務を実施する場合、希望者に申請書を提出させる。その際、家庭環境などの理由は聞くべきではない。希望理由は在宅勤務の適性には関係ないのだ。ただし、在宅勤務は職場の理解とサポート抜きには成り立たない。自律しているからといって、在宅勤務者一人で在宅勤務を成功させることは不可能だ。フレックスタイムや有給休暇などと同じく、「お互い様」意識で助け合う体制が必要になる。

安易に在宅勤務を実施すると、同僚などの関係者が制度への正しい理解をもたないため、軋轢が生じることもある。それを避けるためには、在宅勤務を希望しない社員を含めた対象部署全員向けの説明会を実施すべきだ。その際、在宅勤務者には、オフィスで働く以上に高い倫理観とチームワークが求められることを理解してもらう。

在宅勤務者本人も常に感謝の気持ちを忘れず、自分がオフィスにいるときに他のメンバーが不在である場合には、積極的にサポートするとよい。

双方の努力の結果、在宅勤務制度の導入前よりも職場のコミュニケーションが向上し、チームワークが向上するという副次効果が得られることも少なくない。

在宅勤務制度は、職場全体に正しい理解を事前に浸透させ、適性のある社員とタスクを選定し、適切な教育研修を行うことで初めて効果を発揮する。その導入は簡単ではなく、入念な準備によってのみ成功する。

社員と企業の双方にメリットをもたらす在宅勤務制度。他の人事制度と同じく、成功のカギを握るのは職場における信頼関係であることを強調しておきたい。

(構成=大宮冬洋)