国内・真水方式で20年までにCO2排出量を90年比25%削減するという日本の中期目標が、国際的にみて破格の高コストをともなうものであることは、この表から一目瞭然である。

それでは、中国・アメリカ・インドの三国に日本の石炭火力発電のベストプラクティスを普及し、CO2排出量を年間13億4700万トン削減するには、どれくらいの費用がかかるであろうか。

経済産業省は、この点について、ある概算を行っている。

そこでは、日本の石炭火力発電のベストプラクティスを普及する際に、中米印三国の石炭火力発電所のすべてを新設し直す(三国で発電容量60万キロワットの石炭火力発電設備を合計1355基新設する)という大胆な仮定がなされている。

結果としてはじき出されたCO2排出量の限界削減費用は、9479円/トンである。実際には、すべて新設する必要はなく、既存設備の改造ですむ場合が多いから、この9479円/トンという数値は、相当に過大評価されたものといえる。

しかし、それでも、表2に掲載されている国内・真水方式にもとづく日本の中期目標の限界削減費用(476米ドル=3万6700円/トン、為替相場は11年11月12日午後10時56分現在)に比べれば、ほぼ4分の1にすぎない。

我々が直面しているのは、「日本環境問題」ではなく「地球環境問題」であるから、石炭火力技術の海外移転でCO2排出量を削減するという方法は有効である。

その際、CO2排出量削減分を、二国間クレジットの方式によって、日本と技術輸入国との間で分けあうことになる。

つまり、わが国の地球温暖化防止策の軸足は、原子力発電を使った国内でのCO2排出量削減から、石炭火力技術移転と二国間クレジットを用いた国外でのCO2排出量削減へ、移行することになるわけだ。

(大橋昭一=図版作成)