長期目標は短期に分割する

さらに、プロジェクトや目標が長期にわたる場合、達成に向けて中長期的な成果を積み重ねることが重要となる。目標もそれに応じて分割され、具体化されることで効果が高まる。

困難な目標に挑戦する場合も、一気に達成しようとするよりも、いくつかの小さな目標に分割し段階を追って達成していくほうが、高い業績を得られる。

たとえば、1年先に達成すべき目標が120ならば、これを3カ月ごとに30の目標に分割して達成を目指すほうが、結果的に高い業績を得られるということだ。

つまり、大きな目標を設定すると、目標までの心理的な距離が遠くなるが、それをいくつかのステップに分けることによって距離が縮まり、「これならできそうだな」という自信や関心度が高まる。その結果、達成するための考え方や手段を具体的に考えられるようになるのである。

長期目標では、途中で達成する自信がうすらぎ、不安を抱くようになる。その結果、新しいことにチャレンジしようとする意欲が弱くなり、現状維持志向が強まる。目標の分割は、このような不安を減らし、現状維持から一歩踏み出すきっかけを与えてくれるのである。

心理学者のバンデュラとシャンクは、一方の群に長期目標を与え、もう一方の群には同じ目標を分割して与えて、仕事の成績を比較した。結果は、分割目標群のほうが仕事に対する興味が増し成績が高かった。

さらに、短期目標を達成するとスキルが上達するので、長期目標達成への意欲も高まることを明らかにしている。

ただし、現実には目標を分割することがむずかしい場合もあるし、分割したために本来の目標とのつながりが見えにくくなってしまうことも起こる。このような場合は、一つの目標を達成して終了にならないように、本来の目標と分割目標との関係性を明確にしておく必要がある。長期目標と短期目標、上位目標と下位目標、また同じレベルにある目標同士の関係性についても、同様である。

※参考文献
古川久敬編(2006)『産業・組織心理学』南隆男・浦光博・角山剛・武田圭太(1993)『組織・職務と人間行動』
Bandura, A. and Schunk, D.H. (1981).Cultivating Competence, Self-Efficacy,and IntrinsicInterest Through ProximalSelf-Motivation. Journal of Personality andSocial Psychology, 1981,41,586-598.