石炭火力発電は「段階的廃止」から「段階的縮小」に

スコットランドの首都グラスゴーで10月31日から開催されていた第26回気候変動枠組条約締約国会議、通称COP26が11月13日に閉幕した。2015年のCOP21で採択された「パリ協定」の履行を目指すとともに、さらなる気候変動対策の加速や充実を目指す「グラスゴー気候協定」が、約200カ国・地域の間で締結された。

2021年11月2日、国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)でのジョンソン英首相(イギリス・グラスゴー)
写真=AFP/時事通信フォト
2021年11月2日、国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)でのジョンソン英首相(イギリス・グラスゴー)

当初からの懸念通り今回のCOPでは、最大の争点であった石炭火力発電の扱いに関し各国の利害が大きく対立した。単純化すれば、それは温室効果ガスの削減を目指し石炭火力発電の性急な廃止を要求する欧州連合(EU)を中心とした先進国と、石炭火力発電の段階的な削減を主張する途上国や化石燃料の輸出に依存する資源国の反目であった。

当初の会期を一日延長して実施された詰めの協議では、中国とインドが土壇場で共同声明の表現に対して異議を唱えた。米国のケリー特使の調整の下、EUと4者間での協議が行われた結果、非効率な石炭火力発電や化石燃料への補助金の「段階的廃止(phase out)」という表現が「段階的縮小(phase down)」に書き改められた。

廃止から縮小に表現を変えたことで、中国とインドは石炭火力発電に存続の道を残したわけだ。廃止の要求にそもそも無理があったわけだが、結局のところ米国の仲介もあり、EUが中国やインドとの関係を優先して妥協に応じたことになる。グローバルプレーヤーとしての中国やインドの存在感の強さを印象付ける出来事だと言えよう。