元・週刊現代編集長 元木昌彦●1945年生まれ。早稲田大学商学部卒。70年講談社入社。90年FRIDAY編集長、92年週刊現代編集長。ヘアヌード、ノーパンしゃぶしゃぶなどの大ヒットを連発し、販売部数は100万部を突破。著書に『週刊誌は死なず』。

それはつくり手が心底「おもしろいと思えるかどうか」だと元木昌彦氏は断言する。「かつてバカ売れした号がありました。宮沢りえと貴乃花が婚約破棄を発表したときのものです。事前に2人がホテルニューオータニで話し合ったという情報を得て、『2人が語った一部始終』というタイトルで出したんです。これは飛ぶように売れましたね。でも代わりにクレームも激しかった。『読んでも何にも書いてねえ!』と(笑)。当たり前です。取材しても何にも出てこなかったんだから。

でも私は知りたいと思った。話し合いの内容がわかれば絶対おもしろいはず。だから事前にタイトルを決めたんです。担当者はさすがに絶句していましたね。『これ、どうやって取材すれば……』って。でも『それを考えるのはおまえだ』と」

ニヤリと笑う元木氏だが、これはかなりの強硬手段。応用するには難易度も高い。氏自身、すべてがこんな調子では雑誌は売れないと認めている。

ならばどこまでなら消費者を「騙す」ことが許されるのだろう。同氏の基準では、「1カ月に1回くらいなら許してくれるはずだ」そうだ。「男女関係と同じで、読者もあまり愚弄しすぎると離れていくからね……」。その見極めが難しいのだが。