2021年8月に武装勢力タリバンがアフガニスタンの政権を奪還して以降、日本のマスコミはタリバンをテロリストのように報じている。同志社大学の内藤正典教授は「タリバンは軍事作戦に関与していない日本を敵視していない。20年にわたってアフガンを支配し続けてきたアメリカの失敗を学ぶべきだ」という――。
タリバンの演説
写真=AA/時事通信フォト
2021年8月31日、アフガニスタンのヘラートで、米国のアフガニスタン撤退完了後、ヘラート州知事の前にタリバンのメンバーが集まり、演説をしている。(撮影=Mir Ahmad Firooz Mashoof)

タリバン叩きに終始する日本のマスコミ

8月15日にアフガニスタンの首都カブールがタリバンの手に落ちて以来、20年ぶりに日本の報道にも、アフガニスタンとタリバンが盛んに登場するようになった。その報道ぶりは一言で言えば、タリバン叩きに終始してきた。だが、そのために多くの問題が隠されてしまったことに日本の新聞もテレビも気づいていない。

タリバンというのは、イスラム法通りに政治をやって国を統治しようという組織である。

私はムスリム(イスラム教徒)ではないから、タリバンの主張には何の共感もない。他方、タリバンの主張やイスラムに対する偏見もない。

西欧とイスラムとの関係に焦点を当てて研究をしてきたので、互いに何をしてきたのか、何をしたら取り返しのつかない大惨事を招くかを知っている。ここでは、その視点から、日本の報道の何がおかしかったかを指摘したい。