新型コロナの新規感染者が急速に減ったが、多くの専門家は「第6波」について注意を呼びかけている。医師の大和田潔氏は「コロナ専門家が新規感染者の数字にこだわった結果、長期の自粛を強いられることになった。もし感染者数が増えることがあっても、もう緊急事態宣言は必要ない」という――。
ライトアップされた街路樹をみるカップル
写真=iStock.com/monzenmachi
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急減した新型コロナの「新規感染者」

「感染者数」(陽性者数)が急減しています。全国でも数百人、ゼロの県も増えている状況です。緊急事態宣言も終了して普通の暮らしが戻りつつあります。遠い道のりでした。みなさんお疲れさまでした。のんびり考えるのに最適な時間です。

8月に、政府分科会の尾身茂会長は、東京の新規感染者は最悪の場合1日1万人もあり急激に減少することは考えにくい(注1)とし、陽性者は8月下旬には1日4万人に上るだけでなく激増をつづけて東京の医療がベッドが足りなくなり崩壊するだろうと試算していました(注2)。どちらも大きく外した予想でした。陽性者の急減も納得の行く説明がなされていません。

ホッとすることに、コラムにお書きしたように陽性者と死亡者数のリンク切れも起こしていました(注3)。陽性者が増えても死者数や重症者数と連動しなくなり、PCRによる陽性者数のカウントは意味を失っています。

下げ止まりは「リバウンド」ではなく、どこを探しても陽性者がいる季節性になりつつあることを意味しています。日本の復活には、感染者数を恐怖と不安の材料として世の中を動かそうとしてきた専門家から距離を置くことが必須です。

政治家として発言を繰り返した“コロナ専門家”

『中央公論』2021年11月号に、「菅政権がコロナに敗北した理由」と題する尾身氏のインタビュー記事が掲載されました。

驚いたのは、東京五輪について「観客を入れても、私は、会場内で感染爆発が起きるとは思っていませんでした。しかし、観客を入れたら、テレワークなどによって人と人が接触する機会を少なくしてほしいと国民に求めていることと矛盾したメッセージを送ることになります」と明言していることです。

この記事に哲学者の東浩紀氏は「この発言には、尾身氏のスタンスがはっきりと表れている。ひとことでいえば尾身氏は、専門家として『政治の素材としての客観的分析やデータ』を提示しているのではない。世の中に与える影響をあらかじめ考慮にいれて発言している。つまり科学者ではなく政治家として発言している」(2021年10月8日 Twitter)と指摘しました。

まさにその通りです。「オリンピックが有観客でも感染爆発が起きるとは思っていなかった」と専門家は考えていたそうです。みなさん、そう受け取っていましたか? 驚きです。そういえば、菅義偉首相(当時)の頭ごなしにIOCにオリパラ中止も進言していましたし、私権制限の法整備にも熱心に言及していました。